青薔薇の至愛



土曜日、他校生に声をかけられて、そのまま連絡先を交換した芽愛ちゃんが、その人達をボウリングに誘ってこの状況が生まれた。


芽愛ちゃんはボウリングが上手いから男の子達とワイワイと楽しそうに雰囲気に溶け込んでるし


葉純ちゃんは、ボケーッと突っ立ってボールの指穴に人差し指を突き刺していた。



次は私の番で、慌てて立ち位置を決めて投げるけどボールはすべてガター行き。


自分の運動音痴さに落ち込みながら、イスに座ると隣に座っていた男子が話しかけてきた。



「ボウリング苦手?」


「えっ!?あっ、うん。
 ボウリングっていうよりも、運動全般苦手で……」


せっかく話しかけてくれた優しい人に、人見知りを発揮してしまう私はチラチラと不審者のように彼を見ながら口を動かす。


この人は確か……藤永君だっけ。


自己紹介の時、一人だけ落ち着いていたから大人だと勘違いしそうになったけど
他の男の子達と一緒で学生服着てるから、同い年だよね。




「ふ、藤永君はボウリング得意?」


「ううん、僕も苦手かな」


「あっ、そうなんだ、一緒だね!」




どうしよう。


会話が続かない。



私の心の朱ちゃんが『いいか優乃、男は全員狼だ。話すときは常に警戒しろ。お兄ちゃんとの約束だ』って、うるさいし……。


百回朱ちゃん本人に言われた言葉を思い出し、ヘラっと自然に笑みが溢れてしまう。



だ、ダメダメ!!


今日は朱ちゃんのこと考えないようにしなきゃ。


せっかく、芽愛ちゃんが誘ってくれたんだもん。


ボウリングに集中だよ。



「……朝井さんって百面相だね」


「えっ!?」


「気まずそうにしてると思ったら、こんどは笑うんだもん。
 なにか面白いことでも思い出した?」


「えっ、い、いやぁ……」




< 66 / 208 >

この作品をシェア

pagetop