青薔薇の至愛
いつも必ず返事をしてくれる朱ちゃんの無言が怖い。
どうして怒ってるんだろう……?
考えても分かんないし、考える暇もないくらいギュッと握られた手の力が強くて、体がどんどん熱くなってくる。
ボウリング場から出て、沈黙が続いた数十分後、朱ちゃんは私を家には帰さず、自分の部屋へと引っ張った。
薄暗い部屋の中は、妙に朱ちゃんの存在感を濃くする。
ドアの鍵がかけられる音がした。
手は握ったまま、朱ちゃんがジッと私を見下ろす。
「朱ちゃん……怖いよ」
「なんでキスしてんだ?」
「えっ?」
「あの男と」
「……き、……えっ、キス?!」
キスってなんのこと?!
あの男って藤永君の事だよね??
「今日はじめましての人と、しかも付き合ってないのにするわけないよ?!」
「してない……?あんなに至近距離にいて?」
「距離……?あっ、違うよ!!
あれは私がペットボトル落としたから、拾おうとしてくれた藤永君とオデコぶつかっただけでキスなんて……」
「キスキス言うな、なんか腹立つ」
「朱ちゃんから言ったくせに……!」
「優の口からそんな言葉聞きたくねーんだよ。
想像しちまうだろ、他の男としてるとこ」
「……」
「本当にキスしてたら、危うくアイツをボウリングのピンにするとこだったな」