青薔薇の至愛



手をグーの形にしドアに凭れかかる朱ちゃんは、私を逃がさないよう背後から囲う。



「優が好きなのは、俺だろ」


「……っ」


「なのに、振られたって勝手に決めて次の日には男遊びだ?」


「ご、誤解だよ」


「ふーん、……誤解ね。」




薄暗い部屋の中、外は夜へと変化したのが閉めたカーテン越しに見ても分かる。



この部屋に来てから何分経ったんだろう……。


ずっとうるさいままの心臓が、そろそろ限界を迎えそう。



今にも死んじゃいそうなほど緊張している私とは違って、どこか余裕な朱ちゃんは私の耳元で話し始めた。



「なあ、優」


「ち、近いよ朱ちゃん!
 聞こえてるからもう少し離れて喋って」


「お前からキスして」


「……はい?」


「そしたらやっと、手が出せる」


「……??」


「そろそろ限界なんだわ。
 お前から俺を襲ってくれたら、正当防衛でお前に手だしても罪悪感ないだろ?」


「朱ちゃん、なに言ってるの??」


「俺が何十年我慢してると思ってんだ。
 お前が大人になるまで、お兄ちゃんとして大切に見守っておくつもりだったのに」


「……」


「ぜんぶ優のせいだから。
 俺を嫉妬させたのが、お前の運の尽きだよ」



< 78 / 208 >

この作品をシェア

pagetop