青薔薇の至愛
手をグーの形にしドアに凭れかかる朱ちゃんは、私を逃がさないよう背後から囲う。
「優が好きなのは、俺だろ」
「……っ」
「なのに、振られたって勝手に決めて次の日には男遊びだ?」
「ご、誤解だよ」
「ふーん、……誤解ね。」
薄暗い部屋の中、外は夜へと変化したのが閉めたカーテン越しに見ても分かる。
この部屋に来てから何分経ったんだろう……。
ずっとうるさいままの心臓が、そろそろ限界を迎えそう。
今にも死んじゃいそうなほど緊張している私とは違って、どこか余裕な朱ちゃんは私の耳元で話し始めた。
「なあ、優」
「ち、近いよ朱ちゃん!
聞こえてるからもう少し離れて喋って」
「お前からキスして」
「……はい?」
「そしたらやっと、手が出せる」
「……??」
「そろそろ限界なんだわ。
お前から俺を襲ってくれたら、正当防衛でお前に手だしても罪悪感ないだろ?」
「朱ちゃん、なに言ってるの??」
「俺が何十年我慢してると思ってんだ。
お前が大人になるまで、お兄ちゃんとして大切に見守っておくつもりだったのに」
「……」
「ぜんぶ優のせいだから。
俺を嫉妬させたのが、お前の運の尽きだよ」