転生悪役令嬢のお目付役

 そもそも篠崎さんだと認識できるだろうか。全くの別人になっていたとしたら、果たしてお目付役は務まるのだろうか。

 安請け合いしたほんの数十分前を悔やんでいると、父親らしき人に連れられて噂のジュリアン嬢が登場した。

 花が綻ぶ様だとは、よく言ったものだ。可憐な顔立ちは白い肌に薄く頬に紅を染め、ますます魅力的に映る。艶めく黒髪は軽く波打ち、肩から腰に伸びる。

 息を吸うのも忘れ見入っていると、スチュアートが咳払いをしてから話し始める。

「グラフィス卿、ジュリアン嬢。ご足労いただき、ありがとうございます。フィリップ王子は体調がすぐれません。誠に不運でございました」

 スチュアートの言葉を受け、たくましい体格の父親は丁寧に腰を折って応じる。
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