初恋物語~大切な君へ

所定場所に着いた私は、ベンチに座り
海岸を眺めている。
腕時計は丁度、21時を指していた。
周りを見渡すと明らかにカップルが多く
何だかここに居るのが恥ずかしくなって
きた。
とにかくどうでも良いから早く颯太君
来て欲しい。
1人でここで待つのは恥ずかしい。



雫が20時45分にレストランを出たのを
確認した。
海岸通りに来てくれるか着くまで
不安で仕方ない。
早く21時にならないかとソワソワしていた。
すると、同期の矢澤がニヤニヤしながら
話しかけてくる。


「吉川、なにソワソワしてんの?」



「何もソワソワしてないよ。」


「そう?」
「なんかいつもの吉川じゃないなぁって(笑)」
「もしかして、あれか!」
「さっきの吉川が担当したお客様に惚れた?」



「はぁあ?!」


「いやー分かるよ。」
「俺も、良いなあって思ってたんだよ。」
「特にアイボリー色のトレンチコート」
「着てた子!」
「他の女性とレベル違うし。」
「めちゃくちゃ可愛いよな。」

雫の事を言っているのだとすぐにわかった。


「吉川、何か話してなかった?」
「もしかして知り合い?」


「俺の元カノ。」


「えっ!!」
「なんで別れた!?」


「言わない。」



「ええーケチ!」


矢澤と話ししていたら、21時になっていた。
マスターから上がって良いぞっと声をかけて
くれたので、俺は早々にタイムカードを
押し、私服に着替えて走って海岸通りに
向かった。




「雫!」
「待たせてごめん。」



「颯太君、おっ……お疲れ様。」




「急にごめん、あんな紙渡してしまって。」


「うっうん。」
「久しぶりだね。」
「おかえり!」

私は、笑顔で言った。
友達だもん……笑顔でおかえりって言って
あげなきゃ。



「ただいま。」
「座って良い?」



「もちろん。」

雫は少しベンチの端に移動し、
俺が座れるようにしてくれた。
雫は笑顔でおかえりって言ってくれた
事が凄く心の救いになる。



「本当に久しぶりだね。」
「元気にしてた?」



「うっうん元気だったよ。」
「颯太君も元気そうで良かった。」
「日本に帰ってきてたの知らなかった」
「からさっきはすごくびっくりしたよ。」



「てっきり、圭介が言ってるのかなって」
「思って……。」
「それに、スマホの番号変わってるだろう」
「と思って連絡してなかった。」



「圭介言ってくれなかったよ。」
「それに私、スマホの番号変えてないよ(笑)」


きっと圭介は私が颯太君と会ってしまう
事を心配してたから帰って来たことは
言わなかったのだと思う。
逆の立場なら私もそうする。


「そうだったんだ。」




「ねぇ、颯太君私に何か用事があるのかな?」
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