わたしたちの好きなひと
「掛居っ」「うるさいっ」
 抱きつこうとしたわたしを、真っ赤な顔をした掛居が全身でよけて背中を向けた。
 いまの恭太のシュートは掛居にとって、GKを真正面から蹴散らすミラクルシュート。
 わたしは掛居の背中にもうひとつおまけのエルボーショット。
「痛いよ、シューコ」
「これまでのお返しだい」
 ここからはライバルだからね。
 独り占めしたらだめなんだからね。
「わたしにいじわるしたら、やり返す!」
「いじわるなんか、したことないだろが」
「さんざん! してきたでしょうが」

「…ったく、おまえらって……」
 恭太がうしろで苦笑いをしているけど。
 わたしはうれしくて。
 掛居もきっとうれしくて。
 恭太を無視して、くすくすと小突きあい。
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