わたしたちの好きなひと
 4人でぜーぜー肩で息をしながら長い階段を登っていく。
「ね、稲垣さん、鈴木ちゃん。こんなところでお弁当なんて……、食べられそう? あたし、もう無理ぃ。うう…」
「がんばれぇぇ」
 お弁当をいただくなら、もっとふさわしいロケーションがあるでしょうに。
 なんで岡本ってば、こんな体力勝負な場所を選ぶのよ。
 資料は渡してあるでしょ。
 神護寺の階段て400段よ。
 もう、いじめだわ、こんなの。
 

「うわー。やればできるものね。絶景だわぁ」
 なぜか写真家と化した岡本より、黙々と階段を上ったわたしたちのほうが早く平地に到着。
 鈴木さんが、一向に上ってくる様子のない岡本を、心配そうに目で追いながらわたしをちらりと見た。
 なあに?
「やっぱり…名古屋事件? 岡本さん、(こん)くんに事前に知らされなかったみたいだから――…」
 そう…思うよね、ふつうは。
「巻きこみたくなかったんだと思うけどなぁ」
 わたしは思いっきり! 巻きこまれたけど。
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