このせかいに在るがまま
非常階段は雨で滑りやすくなっていた。
暗い足元をスマホのライトで照らしながら4階までのぼりきる。
黄色と黒のテープで固定された見掛け倒しのドアノブに手をかけると、扉が少しだけ空いていたのか、つめたい風と水しぶきが隙間から飛んできた。
誰か、先に来ている人がいる。
この半年、彼を思いだすたびに此処にきたら会えるかもしれないと少しの期待を抱いて頻繁に訪れていたけれど、ドアはいつも音がなるまで閉めていた。
わたしじゃない、他の誰かがこの先に居る。
───なんて、考えたところでその正体は分かりきっているけれど。
雨の日に此処に来るのは始めてだった。
どんな世界がそこにはあるのだろう。この先で待つきみは、何を抱えて生きているのだろう。
不安と緊張、それから、期待。
全部抱えて、わたしはゆっくりドアをひいた。