御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「早希に惹かれているのを、彼女に言われるまで自覚できなかった」

 今、彼はなんて言ったの?

「……意味が、わからないです」

 混乱する頭を抱える。惹かれるって、誰が誰に? だって彼はそんな素振りひとつ見せたことがない。

「ずっと好きだった。早希が思うよりも前から」

 信じられずにいる私の思いを消すように明臣さんは真正面から真剣な表情で告げる。

「早希が優秀で秘書だから必要だったわけじゃない。早希自身が必要なんだ。それに俺自身が気づくのにずいぶんと遠回りをした」

 日比野さんが指摘したと言ったが、どうして彼女が明臣さんの気持ちを察したのか。明臣さん曰く、仕事の話をする中で、つい自分の秘書として私の話題をよく出していたらしい。

 それで日比野さんが、私がふたりで会っていたレストランの予約などをしていたことも知っていたのかと納得する。

「……でも私、明臣さんに家柄も育った環境もなにひとつ似ていませんよ?」

 彼が結婚するうえで大事にしていた条件だ。指摘すると明臣さんは苦虫を噛み潰したような顔になる。

「わりきって結婚するならと、そういったところを気にしていたが、そんなもの意味がないってわかったんだ。早希の性格も能力も育ってきた家庭環境すべてをひっくるめて愛しく感じる」

 ストレートな物言いに照れてしまい、わざと話題を変える。日比野さんとの件だ。

 私が会社を訪れたときにふたりの姿を見たのは、祖父と共に明臣さんのお父様のお見舞いにきた日比野さんを送っている途中だったらしい。

 空回っていた自分が居た堪れない。それにしても。
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