御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「明臣さん。結婚を考えている女性を前に他の女性の話は厳禁ですよ」

 つい秘書の調子でたしなめてしまう私を明臣さんはおかしそうに笑う。

「かもな。でも、おかげで自分の気持ちに気づけた」

 けれど自覚したところで、明臣さんのお父さんが倒れてあんな事態になってしまった。

「本当は、起きたときに伝えるつもりだった。ちゃんと話すから待っていてほしいって。でも起きると早希はいなくなっていて、出張から戻れば仕事も辞めている。おまけに理由は結婚だと聞いて、俺との関係をないものにしたいんだと思った」

「……すみません」

 私は素直に謝る。妊娠という事情があったとはいえ、私も彼と向き合おうとはしなかった。

「いや。それでも君島さんの話を鵜呑みにせず、直接早希に会いに行けばよかったんだ。ただ……」

 そこで言葉を切り、明臣さんはわずかに続きを言いよどむ。首をかしげて彼を見つめると明臣さんは私の手を握っている指先に力を込めた。

「くだらないプライドが邪魔をして自分から会いに行けなかった。結婚して他の男の隣で幸せそうにしている早希を見るのが嫌だった。会えば早希を責めそうで、力づくでも奪いそうな気がしたから」

 握られている手から伝わる明臣さんの体温が温かくて、言葉にできない感情が胸を詰まらせる。

「早希」

 彼は迷いない眼差しを向け私の名前を呼んだ。
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