御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「おかえり、千葉。上がらせてもらってる」

「岡崎」

 年明けに実家に顔を出した俺は、父親と共に俺の父の元を訪れていた岡崎尊に久しぶりに会った。

 株式会社ストリボーグの社長を父から引き継いだ身として挨拶がてら一緒に訪れたらしいが、俺の父は岡崎の父親と話が盛り上がっているらしい。

「悪いな、わざわざ」

「いや。にしても親父さん、なんか雰囲気変わったな。丸くなったというか……」

 岡崎の感想は、退院後の父に会う人間が皆、共通して抱く印象だった。仕事一筋だった父はすっかり家族や周りにいる人間を優先するようになった。

 こうして友人や知人を家に招いては談笑する機会を設けている。年末にはヒビノ工業の社長も孫娘を連れ会いに来た。

 先に会社に戻るついでに彼女を送り届けたが、父の体調面の話ばかりで、とてもではないがお互いに結婚を考えていた相手とは思えない態度だった。
 
 自分が薄情なのか。当分、結婚を考える余裕もない。両親も俺の結婚について口出す状況ではなくなった。父の体を心配していた母は幸せそうにしている。

 出張から戻り、改めて父とゆっくり話す機会があった。

『病院に来てくれたそうだな』

 父の発言の意図をどう捉えるべきか悩む。会社を経営する身として、身内が倒れたくらいで病院に駆けつけたことを叱責でもするのか。

『……秘書に無理やり連れて行かれたんだ』

 無愛想に返す。父は昔から自分に対しては非難めいたことしか言わなかったので、自然とこういう態度になる。
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