御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 色が豊富なガーベラは他の花と合わせつつよく選んでいた。

「はい。見た目はもちろん花言葉も“常に前進”とか“前向き”とかそういったもので好きなんです」

 自分へのエールも兼ねていた。とくに社長から感想をもらったことはなかったけれど、ちゃんと気にかけてくれていたんだ。

 それを意識してわざわざ私のために用意したのだと思うと笑みがこぼれる。

「私にもありがとうございます。社長は部下や秘書をちゃんと見てくださっているんですね。さすがです」

 やっぱり社長はすごい。感動も合わさり本心で告げた。

「いや……」

 しかし社長は歯切れ悪く返してくる。その態度に私は急に不安になった。

 もしかして見当違いなことを言った? さすがとか言い方が失礼だったかな?

「もっと見ておけばよかった」

 脳内であたふたしていたので社長が続けた言葉を聞き逃しそうになった。実際、なにを言われたのかよくわからない。

 戸惑う私をよそに社長がさりげなく距離を詰めてくる。十分に近かったのに、さらにパーソナルスペースに踏み込まれ、居心地の悪さよりも緊張で動けない。

「見ていたら、こうはなっていなかったのかもしれない」

 社長の言い方は曖昧でいつも私の心をかき乱す。

「それは」

 どういう意味なの? なんでそんな切なそうに言うの?

 尋ねる前に、彼の手が伸びてきて私の頬に触れた。大きな手のひらは思ったよりも温かくそちらに注意を持っていかれる。
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