御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
「今はあのときほどひどくない」

「そうですか、ならよかったです」

 人間、変わるんだな。今の明臣さんの秘書は優秀なのもしれない。どんな人なんだろう?

 ふと浮かんだ疑問におもむろにすぐ隣を見上げる。すると思った以上に明臣さんと至近距離で視線が交わり、彼の瞳に映る自分の姿を見つけた。

 目を逸らすことさえ叶わない。動いたのは彼の方でゆるやかに顔を近づけられ、私もごく自然に目を閉じて受け入れた。

 彼と交わす温もりを分かつような甘い口づけは、もう何度目なのか。そのたびに酔いそうになるのは私だけだ。

 離れたのは私からで、意外そうな顔をする明臣さんをよそに下を向いて芽衣を確認する。

 芽衣の寝息は規則的になり、すっかり深い眠りに入ったらしい。

「あ、あの、もう起きないと思うので芽衣をベッドに運んでいただいてかまいませんか?」

 あからさまなタイミングでキスを中断させた私に明臣さんはなにも言わない。

「わかった」

 静かに立ち上がり寝室に戻る彼の後に続く。明臣さんは言われた通り慎重にベッドに芽衣を横たわらせた。

 ただ、その場所がさっきとは違いベビーベッドの方だったので私は思わず目を瞬かせる。 

「こっちじゃまずかったか?」

 私の戸惑いに気づいたのか、彼が声をかけてくる。

「いいえ。芽衣が寝ているならかまわないです」

 即座に否定したものの実は芽衣と別々に寝るのは初めてだった。一方で家では布団でここはベッドだったから勝手が違い、気を張っていたのも事実だ。
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