御曹司は懐妊秘書に独占欲を注ぎ込む
 明臣さんが出張から帰ってきたとき、どう言い訳されても受け入れる覚悟もしていたし、むしろなにもなかったかのように振る舞われても、こちらもそのつもりで対応する気でいた。

 ところが早々に体に表れた異変で、なにもなかったことにするのは無理だと悟った。

 つきまとう眠気と倦怠感、常に熱っぽさと胃もたれを感じて、とにかく早く体調を整えようと躍起になるものの一向に回復には向かわない。

 まさかと思ったのと悪阻という名の吐き気に襲われたのはほぼ同時だった。妊娠がわかって、さすがに動揺せずにはいられなかったとき、ちょうど茜から電話があった。

『早希、また今度ご飯行こうよ。うちへのお誘いの件もまだ諦めてないけれど、他にも話したいことがたくさんあってさー……早希?』

 電話口の私の様子に気づいた茜は、すぐに自宅を訪ねて話を聞いてくれた。私がどうしたいのかも一緒に。

 母にも一応連絡した。心配されながらも相手に伝えて責任をとってもらわなくていいのかと尋ねられ、責任という言葉に私の心はますます頑なになった。

 妊娠を伝えたら明臣さんはどんな感情を抱くにしろ、きっと知らないふりはしない。なにかしらの形で責任を果たそうとする。私や子どもへの感情は差し引いてもだ。

 生んで育ててもらい母には感謝している。もちろん父にも。けれど責任や義務感だけで子どもに接してほしくない。私と同じような家庭環境を、生まれてくる子に与えたくない。

 だから私はひとりで芽衣を生んで育てることを決めた。
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