今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
振り向くと、やって来たのは背が高くガッチリとした体格の男性。

一見するとスポーツクラブのインストラクターでもやっていそうな彼なのだが、こう見えて医師だ。

八年前、私が交通事故に遭って怪我をしたときの担当医――整形外科の眞木(まき)先生である。

「お久しぶりです。眞木先生」

立ち上がって挨拶すると、眞木先生は八年前と変わらない爽やかな笑顔を見せてくれた。

白雪(しらゆき)さん、久しぶり」

はきはきとしていて裏表のない笑顔。好感度の塊のような人だ。

服はビジネスコートの下にグレーのスーツ、水色のネクタイ。

仕事中はジャケットを脱いで白衣を着ている。

「あれから脚は大丈夫?」

彼はコートを脱ぎながら、まじまじと私の左脚を覗き込む。

「ええ。眞木先生のおかげです」

八年前、私が脛を複雑骨折してしまったときも、その笑顔で「大丈夫だよ」と言ってくれたから救われた。

「俺のおかげっていうより、白雪さん自身の努力だよ。整形は俺だけの力ではどうしようもないことが多い。術後のリハビリの影響が大きいからね」
< 10 / 275 >

この作品をシェア

pagetop