今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
「大声を出さずにいられますか! 結婚もしていないのに妊娠させただなんて、恥ずかしい! 親族になんて説明したらいいのか!」

「そのまま説明してくださってかまいません。かねてよりお付き合いしていた女性との間に子どもを授かり、結婚致しますと」

ちなみにその説明は嘘である。

私たちが出会ったのは三カ月前。そのうち一カ月半はビジネスパートナー。残りの一カ月半はすでに妊娠していた。

つまり、交際ゼロ日で妊娠に至ったという計算。かねてよりお付き合いなどしていない。

「ふざけないで! そんな非常識な息子に育てた覚えはありません!!」

母親はいっそう頭に血が上り、呼吸困難にでもなってしまいそう。

そんな姿を、彼は冷ややかに見下ろした。

「非常識? 心外ですね。勝手に息子の見合いを推し進めようとする母親に、常識をとやかく言われる筋合いはないと思いますが」

事実、この見合いは政治的だ。本人たちの意志など、微塵も考慮されていない。

彼は短く息をつき、両親を、とくに表情を凍らせ黙り込んでいる父親をなだめるように言い放った。

「心配せずとも病院は継ぎますよ。ただし、俺の結婚相手に口を出さないことが条件です」

その言葉を聞いて、彼の父親は少しだけホッとしたように表情を緩める。
< 3 / 275 >

この作品をシェア

pagetop