今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
責任感の強い彼なら、そう言うだろうと思っていた。

だが『すべきこと』と『したいこと』は違う。『産むべき』ではあっても『産みたい』かは別の話。

気持ちが伴わなければ、いつか破綻するだろう。『やっぱり息子を愛せませんでした』などとあとから言われても困る。

だったらいっそのこと、私ひとりで育てたほうがいいのではないか――彼の返答次第では、ひとりで産むことも覚悟している。

「私、シングルマザーでもかまわないと思っています」

「は?」

駐車場の真ん中で彼は急ブレーキを踏んだ。

「きゃっ……あ、危ないですよ!?」

咄嗟にうしろを確認するが車はいない。よかった、下手をしたら追突事故になるところだった。

視線を彼へと戻すが、その眼差しが険しいことに気づき息を呑む。

穏やかだった彼の目から温度が消えていた。

「……急に、なにを言い出すんだ」

「……その、先生に迷惑はかからないようにしますから。ひとりで子どもを産み育てる許可をください」

もちろん、シングルマザーなんて簡単にできることではないとわかっている。大変なのは間違いないだろう。

でも、愛のない歪な家庭に囚われるよりは、辛酸をなめるほうがマシだと思う。

「私が責任を持って育てますから」

彼は私の決意のほどを理解したのか、スッと目を細くして、再び車を走らせた。


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