今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
費やしてもらった学費を考えると、心苦しくなるのは事実だ。

幼稚園から高校まで私立のお嬢様学校に通わせてもらい、音大でもかなりお金がかかった。

アルバイトを認めてもらえなかったから、その分、お小遣いも多めにもらっていた。

お嬢様学校は見栄の張り合いもすごくて、小さい頃から生意気にブランド物の財布やバッグなんて買ってもらっていた。

『お母さんは杏の将来を心配しているだけよ。そんなつらい仕事を続けたって、しあわせにはなれないわ。さっさと結婚しなさい』

「必ず別のかたちで親孝行するから、結婚だけは勘弁して」

『親孝行はお母さんの持っていったお見合いを受けることよ!』

頑なな母にムッときてしまった。私もそこそこ頑固ではあるけれど、一応人の話は聞くようにしている。でも母は、耳を塞いでしまって話し合いにすらならない。

「私は働きたいの! 結婚してほしいんだったら、せめて私の仕事を認めてくれる人を探してきて」

もし私が結婚することで母の気が済むのなら、それもひとつの手段なのかもしれない。だがせめて、私が働くことを認めてくれる人がいい。

そんな人に出会えたなら、結婚をしてみるのもいいかしら……。

そんなことを考えたところで、現実的ではないと首を横に振り、思いっきり終話アイコンをタップした。

ああ、なんだかイライラする。母にも、自分にも。

喧嘩がしたいわけではないのに。

タオル片手にバスルームに向かい、お清めのようにシャワーを浴びた。


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