今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
逆にピアニストという呪縛から解放された私は、この先の人生、なんでもできるということに気づき、わくわくした。

かねてより興味のあった雑誌の編集者になるべく、音大を中退して出版社でアルバイトを始めた。

母の理解は得られなかったが、当時の女性編集長が私の夢を後押ししてくれて、家に置いてくれた。

私は二十二歳で実家を出て、編集長の家で寝泊まりしながらアルバイト生活を送ることになる。

編集補佐のバイトをこなしていくうちに記事を書くことに興味が湧き、ライターになろうと決意。

二十四歳で正社員として雇用してもらい、給料も安定し、自活できるようになった。編集長の家を出てひとり暮らしを始めたのはこの頃だ。

二十六歳になったとき、久しぶりに親がコンタクトを取ってきたと思ったら、見合いの話。

せめて良家に嫁ぎなさいと、縁談をたくさん持ってくるようになった。

「家のために結婚しろだなんて。勝手だとは思わないの?」

『勝手なのはあなたよ。全部放り出して好き勝手して。親の言うことのひとつも聞かないのだから』

好き勝手したのは認めるけれど、なぜ親の決めた道を歩まなければならないのか。

「育ててもらった恩があるのは認めるけれど、結婚まで言いなりにならなきゃいけないの?」
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