今夜、妊娠したら結婚します~エリート外科医は懐妊婚を所望する~
手すりにもたれ、曇天と階下に広がる街並みをバックに撮影。

背景が味気ないかと思いきや、そのシンプルさが逆に彼の見栄えのよさを引き立ててくれた。

風になびく白衣、乱れる髪をかきあげて、少し伏し目がちに一枚。

それから、白衣のポケットに手を突っ込んでもらって、斜め下から一枚。

どうしよう、普通に写真集が作れてしまいそうなクオリティだ。まさに外科のフォトジェニック。

「せっかくなので、撮影をしながら少しプライベートのことについて聞かせてください。休日はなにをされていますか?」

「休日ねぇ……学会で潰れることも多いんだよなぁ。羽目を外したいときは、当直の面々を確認して、絶対に呼び出されないだろう日を狙ってドライブ、かなぁ」

西園寺先生が緩く笑みを浮かべる。

ああ、微笑もまたミステリアスで素敵だ。カメラマンの男性と一緒になって、いいですよいいですよと興奮してしまった。

「好きな女性のタイプは? できれば、外見より内面的なことでお願いします」

「あんずちゃんみたいな人」

そう答えながらカメラ目線をくれる。

カメラマンが「いいですねぇーその顔。あんずちゃんもメロメロですよ~」と変な煽りを入れる。

たぶん、カメラマンの男性はあんずちゃんが私だとは思っていない。
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