ハージェント家の天使

加工屋

 翌日、モニカ達は馬車に揺られて、王都の中心部にやってきた。
 今回はマキウスからの希望で、華美ではない、なるべく質素な服装にして欲しいとの事で、ティカがシンプルなデザインのドレスと靴を用意してくれた。
 装飾品の類も身につけないで欲しいとの事で、ペリドットのネックレスは、外から見えないように服の下に忍ばせていたのだった。

「着きましたよ。モニカ」
 馬車の扉が開くと、マキウスはさっと降り立ち、モニカに手を貸してくれた。
「ありがとうございます」
 モニカはマキウスに手を預けると、馬車から降りたのだった。
「ここが、王都の中心部ですか?」
「ええ。主に市場側になります」

 モニカ達が降り立ったのは、繁華街と呼ぶに等しい市場の中心部にある石畳みの広場だった。
 地図で見ると、市場販大天使像と騎士団の詰め所の間にあり、騎士団を挟んだ反対側には、モニカ達が住んでいる貴族街があるらしい。
「少し歩きますが、大丈夫ですか?」
「勿論です。ちゃんと歩きやすい靴を履いてきました」
 モニカは履いていた踵の低い靴をマキウスに見せた。
 マキウスは満足そうに頷いた。
「その靴なら、大丈夫そうですね。歩き疲れたら言って下さい」
「はい!」
 マキウスが伸ばした腕を、モニカは掴んだ。
 モニカはマキウスに連れ立って、市場の中に入っていたのだった。

 市場の中は、茶色と白色の石造りの建物が連なっていた。
 建物の中で営業している店もあれば、建物の前に露店を出している店もあり、ヨーロッパの街並みのようであった。
「活気がありますね!」
「ええ。私が子供の頃に、育った地方や屋敷周辺を思い出します」
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