ハージェント家の天使
御國だった頃、下には歳の離れた弟妹がいた。
「2人共、社会人にーー大人になったばかりなんです。元気にしてるといいなあ……」
もう会う事は叶わないなら、せめて元気に過ごして、御國より長生きして欲しい。
そして、御國が出来なかった、結婚して、両親に孫を抱かせて親孝行をして欲しい。
弟妹を思い出して、モニカは涙が溢れそうになった。
俯いていると、マキウスが肩を抱いてくれた。
「すみません。辛い事を思い出させてしまいましたね」
「いえ。大丈夫です。すみません。私の方こそ……」
モニカはマキウスから離れると、家に向き直った。
「さあ、早く受け取りに行きましょう!」
まだ心配そうな顔をするマキウスに、モニカはなんともないように告げた。
モニカは扉を開けたのだった。
扉を開けると、中にいた男が怒鳴ってきた。
「戻ってきやがったか!? 誰がジジイだ!? ガキ共!!」
モニカが首を竦めると、マキウスがモニカを庇うように前に出た。
「お取り込みのところ失礼ですが、依頼していた魔法石を受け取りにきました」
マキウスに続いてモニカも入ると、そこには大柄な中年の男性がカウンターにいた。
「なんだ。客か。これは失礼」
人間《・・》の男性は、黒色の短髪を掻いたのだった。
浅黒い肌に、鍛え上げられた身体、黒色の無精髭の生えた男は、マキウスを見ると目を丸した。
「あんた、誰かと思えば、先日の騎士サマじゃねぇか?」
「その節は、騎士団にご協力頂きありがとうございました」
マキウスは頭を下げると小さく一礼した。
「それで、今日はブーゲンビリア侯爵家が預けていた魔法石を引き取りに来ました」
「ああ! あれね。代理の者が取りに行くと連絡が来た時は、てっきり下働きの者が取りに来ると思っていたんだが……。待ってな。持ってくっから」
そうして、男は「まさか騎士サマがな……」と、ブツブツ言いながら、奥に引っ込んだのだった。
「マキウス様。今の方とお知り合いなんですか?」
モニカが小声で訊ねると、マキウスも小声で返してきたのだった。
「先日、馬車の事故が遭った際に、事故を目撃されたこの方に事情を聞いたのです」
モニカがこの世界に来たばかりの頃、数台の馬車同士の追突による大きな事故が遭った。
「2人共、社会人にーー大人になったばかりなんです。元気にしてるといいなあ……」
もう会う事は叶わないなら、せめて元気に過ごして、御國より長生きして欲しい。
そして、御國が出来なかった、結婚して、両親に孫を抱かせて親孝行をして欲しい。
弟妹を思い出して、モニカは涙が溢れそうになった。
俯いていると、マキウスが肩を抱いてくれた。
「すみません。辛い事を思い出させてしまいましたね」
「いえ。大丈夫です。すみません。私の方こそ……」
モニカはマキウスから離れると、家に向き直った。
「さあ、早く受け取りに行きましょう!」
まだ心配そうな顔をするマキウスに、モニカはなんともないように告げた。
モニカは扉を開けたのだった。
扉を開けると、中にいた男が怒鳴ってきた。
「戻ってきやがったか!? 誰がジジイだ!? ガキ共!!」
モニカが首を竦めると、マキウスがモニカを庇うように前に出た。
「お取り込みのところ失礼ですが、依頼していた魔法石を受け取りにきました」
マキウスに続いてモニカも入ると、そこには大柄な中年の男性がカウンターにいた。
「なんだ。客か。これは失礼」
人間《・・》の男性は、黒色の短髪を掻いたのだった。
浅黒い肌に、鍛え上げられた身体、黒色の無精髭の生えた男は、マキウスを見ると目を丸した。
「あんた、誰かと思えば、先日の騎士サマじゃねぇか?」
「その節は、騎士団にご協力頂きありがとうございました」
マキウスは頭を下げると小さく一礼した。
「それで、今日はブーゲンビリア侯爵家が預けていた魔法石を引き取りに来ました」
「ああ! あれね。代理の者が取りに行くと連絡が来た時は、てっきり下働きの者が取りに来ると思っていたんだが……。待ってな。持ってくっから」
そうして、男は「まさか騎士サマがな……」と、ブツブツ言いながら、奥に引っ込んだのだった。
「マキウス様。今の方とお知り合いなんですか?」
モニカが小声で訊ねると、マキウスも小声で返してきたのだった。
「先日、馬車の事故が遭った際に、事故を目撃されたこの方に事情を聞いたのです」
モニカがこの世界に来たばかりの頃、数台の馬車同士の追突による大きな事故が遭った。