ハージェント家の天使
 4人は客間のテーブルに着くと、ヴィオーラから詳細を聞いていたのだった。
「そうです。騎士団からリュドヴィック様が我が国に入国を希望しており、その身元保証人として我が家を指名してきました」

 レコウユスとガランツスが友好関係になったとはいえ、両国を行き来するには厳しい審査と、入国するに相応しい余程の理由が無ければならなかった。
 加えて、国に滞在している間に、その者の身元を保証し、滞在中の責任を負える者が必要であった。

「リュドヴィック様は、入国時にモニカさんを身元の保証人として指名されたそうですが、身元保証人になれるのは爵位が伯爵以上の者のみとなります。
 そこで、モニカさんの義理の姉であり、侯爵の爵位を持つ私に、リュドヴィック様の話が来ました」
 モニカとリュドが兄妹《きょうだい》である事は、マキウスがモニカを花嫁として迎え入れた時に、ヴィオーラが調べていた。
 また、リュドの入国理由が、「この国に嫁いだ妹に会う為」という事もあり、ヴィオーラがリュドの身元の保証を引き受けたのだった。

「そうだったんですね。すみません。お姉様。お手間をお掛けして」
 モニカが申し訳なさそうに話すと、ヴィオーラは「気にしないで下さい」と、首を振ったのだった。
「兄妹が会えない悲しみを、私は知っていますからね。会える内に会った方がいいです」
「そうですね。私もそう思います」
 ヴィオーラとマキウスの姉弟は、ウンウンと頷いた。
 2人には、互いに会いたくても会えなかった時期があったから、尚更そう思うのだろう。
 
「そうですね。おふたりがそう言うのでしたら」
「私からも礼を申し上げます。ブーゲンビリア侯爵殿、ハージェント男爵殿」
 リュドが頭を下げると、姉弟は首を振ったのだった。
「礼には及びません。それと、私の事はどうぞ、ヴィオーラとお呼び下さい。畏まる必要もありません」
「私もマキウスと呼んで下さい。リュド殿はモニカの兄上。ならば、私達の家族も同然です」
「そうですね、姉上?」と、マキウスがヴィオーラに問うと、ヴィオーラも頷いたのだった。
「私達がこういう話し方なのは、まあ、子供の頃からの癖の様なものですので、気にしないで下さい。モニカさんも、私達の前ではもっと楽にして下さい」
「はい。お姉様」
< 116 / 166 >

この作品をシェア

pagetop