ハージェント家の天使
「私も『モニカ』とリュド殿についてはよく知りません。私が知っているのは、モニカを迎え入れた際に、国から教えてもらった情報だけです」

 マキウス達は花嫁を迎え入れる際に、国からその花嫁についての生い立ちを教えてもらえる。
 そこでの情報によると、孤児だったモニカは、幼い頃に同じく孤児だったリュドに拾われたらしい。

 リュドは大きな火事に遭って両親を失い、また自身も大怪我を負っていたところを、助けてくれた人達が運んでくれた診療所で治療を受けたのだった。
 ただ、家を焼け出され、天涯孤独となったリュドには治療費を支払う事が出来なかった。
 診療所を手伝う事で、治療費を支払っていたリュドは、ある時、診療所の常連の老騎士に腕を見込まれた。

 老騎士の跡を継いで騎士になる事を条件に、治療費を老騎士に肩代わりしてもらったリュドは、老騎士の元で修行に励んでいた。
 そんな中で、たまたま道端に蹲っていた幼い少女を見つけた。
 それが、モニカだったらしい。

 老騎士は血の繋がりが無いながらも、よく似た見た目のリュドとモニカを気に入って、育てる事にした。
 やがて、リュドは老騎士の跡を継いで、ガランツスの騎士団で、1、2、を争う騎士となった。
 モニカは、すっかり歳をとって自由が利かなくなった老騎士の世話をしていたのだった。

 ある時、ガランツスとレコウユスの者達が大きな犯罪組織となって、両国の平和を脅かす事件が起こった。
 彼らはガランツスと他国との国境付近にあった廃村を根城にして、犯罪に手を染めていた。

 当時は今とは違い、両国共に出国に関しては検査を行っていなかった。
 その為、荷物に紛れて国を出て、両国内外で犯罪を犯す者が、多く存在していたのだった。
 そんな彼らを放置していた結果、小さな犯罪者グループ同士が手を組み始めて、一組織となったらしい。

 そんな彼らを討伐する為に、両国から腕に自信のある騎士達を集めた。
 その中のガランツス側から選ばれた騎士の1人が、リュドであった。
 また、レコウユス側からは、当時まだ一騎士だったヴィオーラが選ばれたらしい。

 そうして、彼らは手を組んで、犯罪組織を壊滅させた。
 その際に1番の手柄を上げたのが、リュドであった。
 両国の危機を救ったリュドは、英雄として両国から称えられたのだった。
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