ハージェント家の天使

流星群と明かされた過去【上】

 そして、流星群がピークの日。
 屋敷で夕食を済ませたモニカとマキウスは、馬車に揺られて小高い丘にやってきたのだった。
「マキウス様、ここは……?」
「私達のお気に入りの場所です」
 厳密に言えば、ここはブーゲンビリア家が所有する土地の1つであり、今は森しかない、ただの小高い丘になっているらしい。
 モニカはマキウスの手を借りて、2人は丘を登った。
「私が子供の頃は、ここの麓に屋敷が建っていました。夏には姉上やペルラ達と一緒に避暑に来ました」

 マキウスがまだブーゲンビリア家にいた頃。夏の間も、姉弟の父親は騎士団に所属していたので、なかなか休みが取れなかった。
 また、マキウスの母親は身体が弱いので屋敷から出られず、ヴィオーラの母親も夏場は体調を崩し気味で屋敷から出られなかった。
 けれども、子供達は元気を持て余していたので、そんな子供達が母親達の邪魔にならないように、夏場は乳母のペルラ一家に連れられて、この屋敷に来ていたのだった。

「この辺りは昔から自然に溢れていたので、私達は毎日この森で遊んでいました」
 ある時、マキウスとヴィオーラは、森の中で迷子になってしまった。
 泣きべそを掻くマキウスを叱咤激励しながら、ヴィオーラはマキウスの手を引いて森の中を歩いていた。
 そんな中、2人は森を抜けて、丘の上に出たのだった。

「森で迷子になった私達は、いつのまにか森を抜けて、丘の頂上に出ていたんです」
 丘の上は見晴らしの良い場所となっていた。周りは草花に覆われて、空を見渡せるようになっていたのだった。
「その日も流星群の日でした。私達は迷子になったのも忘れて、ずっとここに居ました」

 その日は、たまたま流星群がピークの日であった。
 絶え間なく流れる流星群と、空の光を集めた夜咲きの花が輝いているように見えた。
 泣いていたマキウスも、マキウスにつられて泣いていたヴィオーラも、そんな幻想的な光景に、時間も、迷子になったのも忘れて、見惚れていた。
 ペルラが探しに来るまで、2人はずっと丘の上にいたのだった。

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