ハージェント家の天使
「それから、ペルラにこの場所への行き方を聞いた私達は、毎年、流星群の日はここで遊んでいました」
 2人はたまたまこの場所にやってきたが、丘の屋敷からこの場所まで、道があったらしい。
 元々、ここに屋敷を建てるつもりだったが、ここまで丘を登る事や、屋敷を建てるのに森の木々を伐採する必要がある事から、ここに建てるのをやめて、丘の麓に屋敷を建てたとの事だった。
 その屋敷も、老朽化して何年か前に、取り壊してしまったらしいが。

「そうだったんですね……。うわぁ!」
 モニカが地面に足を取られると、すかさずマキウスが腕を引いてくれた。
「気をつけて下さい。この辺りは暗いので、視界が悪いのです」
「すみません。ありがとうございました」
 身体能力が高いマキウス達は夜目が効くらしいが、モニカにはほとんど見えなかった。
 モニカはマキウスに引っ張られるようにして、丘を登ったのだった。

「着きました。ここです」
「ここ……。わぁ!」
 マキウスに連れられてやって来た丘の上は、草花が生えているだけの見晴らしの良い場所だった。
 空を見上げると、星空が視界一杯に広がったのだった。
「綺麗ですね。星空もよく見えます」
 無意識に歩き出そうとしたモニカの腕を、マキウスは掴んだ。
「あの辺りに座りましょう」
 マキウスはモニカの腕を引いて、丘の一角に座ったのだった。

「寒くはありませんか?」
「はい。大丈夫です。マキウス様は?」
「私も大丈夫です」
 マキウスは屋敷から持ってきた布を引くと、その上にモニカを座らせた。
 大人2人は余裕で寝られる布の上に、2人は仰向けになると星空を眺めていたのだった。

 2人はしばらく無言で空を眺めていたが、モニカは「やっぱり」と口を開いたのだった。
「寒くなって来たので、近くに行ってもいいですか?」
「無論です。私も近くに行ってもいいですか?」
「はい」とモニカが返すと、2人はどちらともなく近づいた。
 肩がぴったりくっつくところまで2人は近寄ると、また無言で空を眺めたのだった。
 流星群はピークに達してきたようで、方角に関係なく、空には幾千の星々が流れていったのだった。

「綺麗ですね」
「そうですね」
 1つ、また1つと、星が流れていった。
< 139 / 166 >

この作品をシェア

pagetop