ハージェント家の天使

姉弟【上】

「モニカ様、失礼します」
 マキウスに魔法石をお願いしてから数日後の夕方。
 モニカがニコラと遊んでいると、ティカがやって来た。
「どうしたんですか? ティカさん」
「実は、旦那様にお客様がお見えになっているのですが、まだ帰宅されていなくて……」
「そうですか……。でも、いつもなら、ペルラさんかマキウス様の執事さんが、応対するんじゃないんですか?」
 マキウスが不在時に来客があった場合、ペルラかマキウスの執事が対応をしていた筈だった。
 けれども、ティカは「それが……」と言葉を濁したのだった。
「そのお客様がいつもとは違う方で、今回は旦那様よりも奥様であるモニカ様に用事があるという事でしたので……」
「誰だろう? わかりました。行きます」
(この世界に知り合いはいないし……。誰が来たんだろう?)
 モニカはニコラをベビーベッドに寝かせると、ティカに続いて部屋を出たのだった。

 モニカがティカに案内されて応接間に行くと、部屋から話し声が聞こえきたのだった。
「そうですか。アガタも変わりがなくて良かったです」
「ええ。アガタは立派に我が家に仕えていますよ。ペルラやアマンテに、よろしくとの事でした」
 ティカは客間の扉をノックすると、「失礼します」と開けた。
「ヴィオーラ様、ペルラさん、奥様を連れて来ました」
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