ハージェント家の天使
 モニカもティカに続いて「失礼します」と言いながら入ると、客間にはヴィオーラとペルラが居たのだった。
 椅子に座ったヴィオーラと、側に立っていたペルラは楽しそうに話しをしていた。
 ヴィオーラは仕事が終わってから直接来たのか、騎士団の制服のままだった。
「こんばんは、モニカさん」
 ヴィオーラは椅子から立ち上がりながら、挨拶をしたのだった。
「こんばんは、ヴィオーラ様」
 モニカはヴィオーラの向かいまでやってくると、ティカに椅子を引いてもらって座ったのだった。

「こんな時間にすみません。ですが、急いで渡した方がいいと思い、こちらをお持ちしました」
 そうして、ヴィオーラは手に持っていた白色の小箱をモニカに渡してきた。
「開けてもいいですか?」
 モニカはヴィオーラが頷くと、小箱を開けたのだった。

「これは、指輪ですか?」
「ええ。魔法石の指輪です。マキウスに頼まれて、急ぎ用意をさせました」
 小箱の中には、小さな青色の石がはまった銀色の指輪が入っていた。
 青色の石は等間隔に並んでおり、石と石の間には何か文字が書いてあったのだった。
「急いでいたので、指輪しか用意が出来ませんでした。もし、デザインが気に入らなければ、別の形に変えて下さって構いません」
 ヴィオーラによると、魔法石さえあればどんな形でもいいらしい。
 その際に、魔法石を抑制する呪文を刻む事を忘れなければ。
 特にアクセサリー系は持ち運びしやすく、オシャレな事から、男女問わず人気のデザインらしい。

「ありがとうございます。ヴィオーラ様」
 モニカは早速、指輪をはめた。
 指輪は左手の薬指にピッタリと収まったのだった。
「最初の魔力は、必ずマキウスから貰って下さい。そうする事で、魔法石もマキウスを認識します」
「ありがとうございます。では、マキウス様が帰宅したらお願いしてみます!」

 モニカが指輪を見て目を輝かせていると、ヴィオーラは「それから」と続けたのだった。
「どうしても、モニカさんとお話ししてみたかったのです」
「私とですか?」
 ヴィオーラの真剣な表情に、モニカは背筋を伸ばした。
 何を言われるのかと、モニカが身構えているとヴィオーラは深いため息をついたのだった。
「実は、弟のーーマキウスの事で、話をしてみたくて」
「マキウス様の事ですか?」
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