その呪いは、苦しみだけではなく。


  ***

『こんな場所に花束置いたって、居るわけねえじゃんって事』
『ーー何を言ってるの?』
『此処にはもう一欠片もいねえのに、毎月毎月、花束置いてあってさ。すげえ苛々した。馬鹿じゃねえのって。なんでーー俺は』
 少年は涙を流していた。
 自分でもどうして苛々しているのか、悲しいのか、怒っているのか分かっていない。
 何も分かっていない。
 何も覚えていなかったんだ。

 輪廻転生なんて信じない。前世の記憶を持って生まれる筈なんてない。
 もし生まれたとしても、声も姿も違っている彼は、亮くんではない。
 だから呪いの言葉が、彼には無関係だ。

『俺が死んでも、忘れないで』
 私は頷く。当たり前だから。
『俺以外を、一生好きにならないで』
 もう一度頷く。
『俺だけを好きでいて』
 それは呪いの言葉だ。
 死にゆく間際、彼には私の言葉が最期まで届いていたと、誠弥くんは言う。
 だったら私が言った言葉は、彼に呪いをかけてくれただろうか。
『            』

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