その呪いは、苦しみだけではなく。
真っ赤な少年は、始終「やべえ」だの「どうなってんだ」だの「とまらねえ」とぶつぶつ呟いている。
「少年、じゃない。祥吾くんだっけ。何歳?」
「十七歳。高校三年生になったばかり」
「ふーん。微妙なラインだね」
十八年前に死んだ彼と、十七歳の彼。
微妙な話。
「それなら、死んですぐに誰かのお腹にえいって入ったことにならないと、ギリギリだよ?」
「うるせえな! あんたに会いたかったのなら、えいって入るかも知れねえだろ」
真っ赤になった彼は、どこに私を連れて行くのかと思えば、誰も乗っていないバスに私を押し込んだ。
「お祓いに行くの?」
「んな意味の無いことしない」
そう言いつつも、一番後ろの座席に座ったので隣に座ると、息を飲んだ。
ここまで初々しく意識されると、可愛い。
「じゃあ、どうするの? どうして連れ去ったの」
「知らねえよ。俺が嫌だったからだろ」
「ふうん。君の一時の感情で、私はこの田舎で後ろ指を指されて生きなきゃいけないのよ」
「なんでだよ」
がばっと顔を上げた彼は、目を見開いている。
単純で、短絡思考。そしてこの田舎のぬめぬめした空気を感じていないらしい。
「三十一歳の売れ残り女が、バツイチの男とお見合い。これだけでも面白い噂の的なの。それに加えて、お見合い中に未成年の乱入と未成年と共に愛の逃避行。これが明日には町に広まったら、私はどうなるのかな」
最悪すぎる状況なのに、楽しくてつい笑ってしまう。
「私ね、高校生になったらバスで遠出のデートしてみたかったし、一緒にテスト勉強でひいひいしたかったし、学祭や運動会で恋人と楽しい学生生活を送りたかったんだよね」
「……送ればよかったじゃん。あんた、綺麗なんだし」
「嘘。私、綺麗?」
ぐいっと身体を近づけると、「近づくなよ」と頬を、いや顔を真っ赤にした。茹で蛸みたいで面白い。
「……色も白いし、腰とか折れてしまいそうだし。同じクラスの女子と違って落ち着いてて、綺麗だ」
真っ赤になりつつも髪を掻き上げながら、一生懸命に言葉を探してくれる。
それと同時に寂しくなった。
私は、きっと同じクラスにいたら落ち着いても居ないしうるさかったよ。
「ただ私がオバサンってだけだね」
「美織はオバサンじゃねえし!」