解けない愛鎖
◇
サエと別れて電車を降りたあと、あたしはカバンからスマホを取り出した。
メッセージが一件届いていて、それはもちろん婚約者の彼からだ。
『楽しんでる?飲み過ぎないようにね。家に着いて、疲れてなかったら連絡ちょうだい』
あたしを気遣ってくれる彼からのメッセージに、心が和む。
『家に着いてお風呂に入ったら電話する』
自宅マンションに向かって歩きながらメッセージを返すと、数分遅れで彼からメッセージが届いた。
『待ってる。帰り道、気を付けて』
それに何度か目を通しながら、あたしはひとり頬を緩める。
婚約者の彼は、あたしが務める職場の取引先の人だった。
総務として来訪者の取り次ぎも担当しているあたしが、営業担当としてうちの会社を訪れた彼と出会ったのは、一年ほど前のことだ。
いつもセンスのいいスーツに身を包み、磨かれた靴を履いている彼は、清潔感があり、初対面から印象のいい営業マンで。
事務的に社内へ取り次ぐだけのあたしにも、いつもにこやかに一言二言、話しかけてくれていた。