解けない愛鎖




「これで、リナと同じになった」

ベッドに上がってきたヒロキが、背中からあたしを抱きしめて頭を擦り寄せてくる。

シャワーを浴びたあとのヒロキからは、甘さのキツい香りがすっかり消えていて。代わりにその髪から、あたしが使い慣れたシャンプーの匂いがした。

チクリと首の後ろに感じた痛みに、肩が揺れる。


「痕は付けないで……」

こんな状況を受け入れているくせに、小さな痛みが婚約者の彼への罪悪感を抱かせた。


「髪をおろしといたらバレないよ。だから、しばらくは今の男がリナのこと抱けないようにしといてあげる」

あたしの耳元でふふっと笑ったヒロキが、首の後ろに歯をたてる。


「結婚したらいつだってできるんだから。これが全部消えてなくなるまで、俺のことを想ってればいいよ」

ヒロキのささやく甘い言葉に、背筋がゾクリとする。

首筋から肩へとなぞるように下りてくるヒロキの唇の動きにゾクゾクと感じながら、少し振り向く。

肩越しに視線が混ざり合ったヒロキは、僅かに残る罪悪感で揺れるあたしの目を、艶っぽい表情で上目遣いに見つめていた。



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