路地裏の唄
「再生するよ?」
今だ不満そうな県を置いて鏡をゲンラクへと向ける。
再生されたのは建物の屋上から屋上へと飛び移る映像。
『県、この辺だよ』
玖科の声がして映像が足元へと下がる。
『ゴオォォォォッ!!』
そこに映ったのは無我夢中で分子に炎を吹き付ける律の姿があった。
「……」
「分子は完全に消滅。
プログラムの欠片さえ残ってなかった」
言葉を失ったのか、無言のままのゲンラクに玖科が補足する。
「ねっ?すっごいでしょ?」
「そうそうあるもんじゃないはずだよね?
人にワクチンソフトと同じ能力があるなんて」
二人の言葉にも明らかな反応を見せず、しばらく黙って何か考える風にしていたかとおもえば、ふいにゲンラクが「そこの」と律を呼び、後ろで県が「もーラクさんてば!律クンだよ!」とたしなめたが、気にする風もない。
「今のはケータイのソフトか?」
「え?あ、いいえ」
「前からやってたのか?」
「いえ、さっきが初めてで…」
「………」
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