路地裏の唄
深梁は訝しげに眉を寄せる。
自分を殺す事以外で何か任務があったのだろうか。

分子を減らす事が任務になっていたとは考え辛い。
彼の方はと言えば、ただ、見ていただけだ。


そう、見ていたのだ。ずっと。




それが、ケータイが対象を観察していた、と考えてまず可能性として考えられること…





(戦闘データの、収集…)


「女の子じろじろ見て、やーらし兄さんやなぁ」

「任務のためだ。他意はない」



軽くトンファーを回転させ、その大きな痩身をさらに屈めて低く戦闘姿勢をとる。


ちょうど、獲物を前にした豹のように。

獰猛さを違和感なく抱えた、冷静な殺気。


その冷たい殺気は、先程深梁の中に揺らめいた感覚を色濃くした。

それは、合理的な思考では認める以外に対応のしようのない、本能的な感情。


しかしそれを、その『恐怖』や『萎縮』のきっかけになるような名もない感情を、深梁は切り捨てる。



ツールは分子のようにはいかない。

機関やラプソディアのようなワクチンソフトと戦闘する事を主な任務とするらしいレッド級の中でも、パンサーは特にパワー、強度共に戦闘に特化している。

過去、機関の小隊を彼一体で機能不可にした例が数件あるのだ。



応援を呼ばない以上は彼を深梁一人で止める事は出来ないだろう。

いくら深梁の戦闘力が機関内で一目置かれるものであっても、だ。


この場で深梁が最優先すべきはなんとかしてパンサーを撒く事だ。
そして、その過程で入手したパンサーの情報を持ち帰る事。







ゴーグルの向こうの紅眼が光った。気がした。


真っ直ぐに突っ込んでくる。

遊撃を主な役目とし、特にその脚に機能を集中させるラビットより僅かに遅い。

それでも相当な速さだが対応出来ない速さではない。


改めてその手の内にあるケータイを握り直し、同時に戦闘データを残すために記録が記憶されるように設定する。
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