王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
 猫を見て犬を思い出すって、どういう精神構造なんだろう。なんて。
 おれがちらっと考えたことは町田にはお見通し。
 にらまなくたっていいだろが。
 おれには女の心理なんて、わからないんだ。
 おまえみたいに見えねぇし。
「か…わいい、なんて思ったら――バチが当たる…よね」
「…………」
 おれに言って目を伏せる、平泉さんのさみしげなほほえみの意味なら、おれにもわかる。
『このケーキ食べたら、太るよねぇ』そうおれに言いながら、おれを見ないときのおふくろは、おれに大丈夫だって言ってほしいんだ。
 男に問いかけて、男を見ないときの女に、正論をぶちかましたら理不尽な報復がある。
 平泉さんがおふくろのような鬼だとは思わないが、ここは背中を押してやるのが正解なんだろ?
 町田がいかにもおもしろそうにおれを見ているのは気に食わないが。
 これは、おれの得意分野だわ。
「なんでですか? こいつらは平泉さんが見つけた命ですよ? 見捨てるほうがよほど罰当たりだと思います」
「でも――――…」
「ココくんと同じようには愛せないとか。ばかなこと、言いませんよね」
「……か…と…くん」
「おれには弟がいます。すげぇ問題児だってついこの間発覚したんですけど、それでもかわいいです。でも、ここにいる町田もかわいいですよ。こいつもすっげぇ問題児なんですけどね」
「…………」「…………」
 平泉さんの眉が寄るのは、たぶんそれはどういうことかってことで。
 町田の眉が寄るのは――。
 はぁ……。
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