王女ちゃんの執事4『ほ・eye』王女さんの、ひとみ。
 見上げれば、電車はとなりの駅を通過しました表示。
 スマホを取り出してスリープ解除をすると未読通知が点灯していた。
「やべっ」
 待機連絡をしてから放置していたんだった。
〔9/19 17:30 なにやってるの!早く帰ってきなさい!〕
〔9/19 17:00 一海(ひとみ)さんとデートとかなら許すけど遊んでるなら言いわけ考えて〕
〔9/19 16:30 今日おそくなるって聞いてない どこ?電話して〕
 そこまで開いたところで町田がぷぷっと吹きだした。
「そんなに加藤さんを困らせるって――真央ちゃんですか?」
「うん。遅くなるって言ってなかったから、マジ怒ってる」
「あはははは」ほがらかに笑う町田に、ドでかいプレゼントは用意してあるんだから、助けてもらっても恩にきることはないよな。
 アドレスを開いて、ぽちっと選択。
 コール開始。
「町田。おまえも親に連絡しろよ。今夜うちに泊まってけ。明日の朝、おれといっしょに電車乗って――、帰ればいいだろ」
 虎は2コールで出た。
「あ――、わかった、待て待て待て。いっしょ! 一海といっしょ。――うん」
 虎の説教は切り札で阻止。
「あと晩飯と布団。一海の分、用意して。おふくろにも伝えてな。――うん? そうだよ、一海、泊めるか…」
 気づいて喉がつまった。
 町田がうつむいて、ぽたぽたとホームに涙をこぼしていた。
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