パラダイス、虹を見て。
 ユキさんは細くて長い指を顔に当てて、真剣な表情で私を見る。
「チャーリーに貴女(あなた)の身辺のことは調べてもらった。カスミさんがいなくなった後、養父母は施設からまた子供を引き取って養子にしたんだ」
「……」
「今度は男の子さ。はっきり言うけど君の養父母はとても貴女のことに関して傷ついているんだ」
「ハワード家が…、あの人達が酷いことをしたってことですよね?」

 何故かギョッとした顔でチャーリーさんはユキさんを見る。
「わかってるなら、会うべきじゃないってことぐらいわかるでしょ?」
 何も言えなかった。
 ユキさんから目をそらすと。
 何をどう考えるべきなのか、グチャグチャになる。

「…一つだけ、教えてください」
 緊張で手に汗をかき始めたので。
 ドレスをぎゅっとつかんだ。
「私が、別人として生活することによって。ヒョウさんにとって何のメリットがあるんですか?」

 チャーリーさんは高速でまばたきを始める。
「荒んだ生活からか…、見えるものさえ見えなくなってしまうんだね」
 独り言のようにユキさんが呟いた。
「彼女が悪いわけではありませんよ。貴族社会は常に闇ですから」
 チャーリーさんが、はっきりと言った。
< 13 / 130 >

この作品をシェア

pagetop