花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 前みたいな明るい彼女はいなくて。まるで本当の人形になってしまったようだった。


 俺の知ってる西さんは、どこ?


 名前を呼ぶとまぶしい笑顔で返事をしてくれる西さんは、どこにいってしまったんだ。


 俺があのとき、彼女の呼びかけに答えなかったから?


 混乱して部屋の前でへたり込んでいると、足音がふたつこちらに向かってきているようだった。見ると、医師2人。若くて、いかにもエリート意識の高そうな2人組で、学校にいたら、間違いなくかかわることを避けてしまいそうなキツイ顔をしていた。


 「何をしてるんですか」

 「あの、……すみません」

 「西さんの見舞いですか?」

 「……はい」


 ふたりとも俺よりもはるかに背が高くて、少しだけふくよかな体型をしている。ふたりに交互に質問をされて、それに答えると彼らは互いに目を見合わせて苦笑いした。


 「彼女に干渉することはやめていただきたいのですが」

 「……っそんなのっ、寂しいじゃないですか」

 「信頼できる研究結果が出せなくなったらどうするんですか?」


 その言葉に、眉がピクリと動く。

 研究、って?


 「まあ今回は木崎先生の治療方針に問題があったわけですが」

 「トライアンドエラーという言葉をご存知でしょう。確かにあれは成功する確率はとても低かったですけど、やってみないとわからないものだと思うのですが」

 「ですが、普通、あんなにわかりやすく失敗すると分かっている方法を取りますか?」

 「これも大切な研究の一環ですよ」

 「あわよくば彼女を利用して出世しようとしているのはどこの誰……」


 慌てて顔を逸らされる。口が滑った、とでも言いたげな表情に、どうしようもないくらい腹が立った。

 気が付いたら俺はその木崎とかいう医者に掴みかかっていた。
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