花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く
もうすぐ9月が終わるころだった。
受験生に休日なんてものはなく、今日も例に漏れず俺は机と向き合っていた。英語、国語、それから数学に社会。理科もやらないといけないけど、今は英語を何とかするのが先だ。
テキストを広げて過去問を解こうとしたら、視界の端でスマホの画面がチカっと光った。
──ヴーヴー、
振動と共に低い唸り声をあげる四角い板。
あまりに突然のことで大げさに体が跳ね上がってしまった。
番号を確認する。知らない数字の羅列があったのと、非通知と大きく表示されていた。非通知の番号は取っても間違い電話であることが多いから、今回も無視を決め込もうと思った。
思ったんだけど。
いつまでもしつこく鳴動を続けるスマホ。番号が間違っていることに気付いていないまま電話をかけているんだろう。相手の時間にも限りがあることを考えて、俺は電話に出ることを決めた。
緑色のボタンを押すと、相手とつながった。
「……もしもし、」