花が咲いたら恋に落ち、花が落ちたら愛が咲く

 言いたいことはたくさんあるのに。

 何も喉から出てきてくれない。

 見つけてほしい。気付いてほしい。

 ずっと君のことばかり考えていたんだよ。

 どれだけ息を吸って吐いても酸素が足りない。

 ぼーっとした頭では、何も考えられない。

 指先が冷たくなっていく。

 自力で立てなくなって、膝から崩れ落ちた。

 目の前がチカチカする。

 過呼吸を起こして、地面が目前まで迫ってきている。

 俺は、西さんに言わないといけないことがあるのに。


 「葵くん。ありがと。来てくれて」


 とさり、と。

 柔らかい声、自分じゃないひとの体温。

 彼女がここまで来ていたことにも気づけないくらい、必死だった。

 冷え切った体の芯に、彼女の体温が流れ込んでくる。


 「ずっ、と……会いたか、った」


 途切れ途切れな言葉。それでも、きちんと届いた。

 1年ぶり。

 触れた体温は、どこまでも非現実的で、それでいてあたたかかった。


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