カラフル☆デイズ
三年生の教室に殆ど人がいなくなったのを見計らって、入り口の所から、窓際の一番後ろの席に座っている古川先輩に声を掛ける。
「あのっ!こがわ先輩」
先輩がすぐに私に気付いて、こっちへ来てくれた。
「何、その“こがわ先輩”って。やめてくれる?」
どうして、この人はこういう言い方ばかりするんだろう……。
怒っている様にも不機嫌にも取れる、威圧する様な態度の所為で、こっちまで不機嫌になりそうだ。
「え、じゃあ……“みづき先輩”って呼んだ方が良いんですか?」
少しだけ刺々しくなってしまった私の口調に、先輩が苛立たしげに鼻で笑った。
「あんた、よっぽど濁点が好きなんだな」
「え?どういう意味ですか?」
“こがわみづき”じゃなくて――と、先輩が少しだけ私に顔を近付けて
「ふるかわ、みつきって読むんだよ」
ぶっきらぼうな口調でそう言った後、私の手から書道セットを奪うと、すぐに教室へ戻って行った。
――あんたが今後、またこれを忘れて、俺に借りることがない限りは関係のないことだけど。
そんな、嫌味な一言を残して――。