ほろ苦シナモンと甘い夢


「凪。これ、浅瀬に持って行ってくれ」



颯が渡してきたトレイには1つのカップが置いてある。


エスプレッソの上にクリーム状のミルクがふんわりと乗ったカプチーノだ。

カップを乗せた小皿にはシナモンスティックが添えられてある。


このカプチーノは、ブラックが飲めない私に孝じいがよく作ってくれるやつなんだよね。



「知り合いと言えどウチに金落としていってくれる大切な客だからしっかり接客しろよ。“お待たせいたしました。カプチーノでございます”って言うだけでいいから」


「いや、大切な客に対する言い方が酷すぎる」



颯は「行ってこい」と軽く私の背中を押した。



浅瀬くんは、一番奥の窓側の席で参考書やらノートやらを広げている。

んんっっっ!!真面目!!!!!



私は、深呼吸をしながら颯がさっき言っていた言葉を頭の中で繰り返した。



「お、お待たせいたしました。カプチーノでございましゅ」



か、噛んだーーーーーーーっっっ!!!
なに!!!??「ございましゅ」って!!

キッチンの方で微かに「ぐふっ」という笑い声が聞こえる。颯、あとで殴る。


浅瀬くんは顔を上げて、「朝倉さん、ありがとう」と微笑んで言った。


浅瀬くんはどうやら勉強に集中していて噛んだことに気付いていないらしい。

それか、噛んだことに気付いた上でのこの対応かもしれない。
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