ほろ苦シナモンと甘い夢
浅瀬くんは私の目の前まで来ると、「はい」と言って何かを私の手のひらの上に乗せた。



「がっっっ!!学生証!!!なんで浅瀬くんが!?」


「朝倉さん、今朝転んだ時に学生証落としていったんだよ」



やめて!黒歴史掘り返さないで浅瀬くん!!

恥ずかしさでわなわなと震える私の横でドン引きの颯が「お前転んだの?この歳で…?」と呟いた。



「ほんとは朝 渡したかったんだけど、朝倉さん忙しそうだったから」


「あは、あはは…」


「てか、浅瀬も今日遅刻したんだ」



颯ナイス!!話変えてくれてありがとう!!!と、心の中で彼に盛大な拍手を送る。



「今日はちょっと寝坊しちゃって…。って、ごめん。学生証渡したかっただけなんだ。四宮は朝倉さん送ってくところなんだよね」


「あぁ。じいちゃんに頼まれてな」



颯は、ぽんぽんと私の頭を叩いた。
ので、私は颯の足をかかとでぐりぐりと踏んだ。



「そっか。朝倉さんの家ってどこにあるの?」


「南野中学の近くだよ」



私が答えると、浅瀬くんは目を大きくした。



「じゃあ、帰り道同じだ。四宮、朝倉さんは俺が送ってくよ」


「えっ」



浅瀬くんは私の腕を優しく掴んで、隣まで引き寄せた。

思わず、心臓がドキドキと脈打つ。



「ね、四宮。良いでしょ」


「別にかまわねーけど……」



颯が何か言いたげな表情で私を見つめたけど、すぐに背を向けて「じゃあ、凪のことよろしくな!」と言ってシノミヤの店内に戻って行った。



「じゃ、帰ろっか。朝倉さん」


「う、うん…」



夜風が浅瀬くんのくせっ毛を揺らした。
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