昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「右京さんて、家令なんれすよね。私、家の家計簿つけてるんれすけど、どうしても毎月赤字になっちゃってえ。いい質屋があったら紹介してくれましぇんか? 女だと舐められてしまって高く買い取ってくれないんれすよ」
 右京は一瞬目を見開いて驚きはしたものの、すぐにいつもの真顔に戻って彼女の質問に答える。
「それはいいですが、今話しても明日になれば忘れてしまうのでは? 酔ってますよね?」
「そんなことないれすよ。いまだかつてないくらい頭ははっきりしてましゅ。右京さん、教えてくだしゃい。お願いしましゅ。でないと、屋敷を売らなきゃいけない……ううっ」
 縋るような目で右京に頼んだかと思ったら、凛は急に泣き出した。
「え? ちょっと……」
 右京が珍しく狼狽えた様子で『どうすればいいんですか?』と目で俺に訴える。このままあたふたする様子を見ていたいと思ったが、彼がかなり困惑しているので助けに入った。
「俺が見るから」
 凛の肩に手をかけて近くの椅子に一緒に座る。

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