昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「ビール飲みすぎたんじゃないのか?」
 ついさっきまでは陽気だったのに、今度は泣いている。
 かなり酔っているな。酒も飲み慣れていないんじゃないだろうか。
「そ、そんなことありましぇん。……グズッ」
 凛は否定するが、酔っ払いの答えは当てにならない。泣き止む様子がない彼女の頭を引き寄せて胸を貸す。
〝泣くな〟と言ったところで、無理だろう。思う存分泣いて心が落ち着くのを待つしかない。
 そう言えば、前に彼女の弁当を食べた時も同じようなことがあったっけ。
 昔、自分の指輪をあげた女の子が健気に頑張って生きているのを見ていると、なんとも言えない気持ちになる。
 凛にだけ特別な感情を抱くのは、指輪で彼女と繋がっているからか?
 彼女との再会は偶然ではなく必然なのかもしれない。
 急に凛が静かになって、彼女の顔を覗き込む。
「凛、寝たのか? 凛? 凛?」
「……はい」と小さな声がするが、彼女の目は閉じられたまま。
 今日は仕事もあったから疲れたのかもしれない。

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