昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 そこで、青山財閥の総帥の婚約も発表される。客船の一室で私と鷹政さんはパーティが始まるのをテーブルに座ってコーヒーを飲みながら待っていた。
 鷹政さん曰(いわ)く『婚約発表はついでだ』という話だったが、周囲の解釈は違った。
 弥生さんには『鷹政さまと凛さまの婚約発表がメインに決まってるでしょう!』と凄い剣幕で怒られるし、右京さんも『パーティでの凛さまの評価がよければ青山財閥の関連企業の株も上がるでしょう』なんてプレッシャーをかけてくる。
 このパーティの主役という大役に昨日はあまりよく眠れなかった。
「もう百回聞いた。大丈夫だ。俺もパーティは好きじゃないから」
 鷹政さんはフッと笑ってそんな話をするが、なんでもそつなくこなす彼に言われても全然慰めにならない。
「鷹政さんは慣れてるじゃないですか。私、緊張で死んでしまいます」
 ついつい恨み言を口にする私の肩に手を置いて鷹政さんは宥める。
「それは困る。だが招待客は身内ばかりだし、凛の女学校時代の友人も呼んでいる。楽しめばいい」
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