昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 今、病室に凛とふたり。個室で他の患者はいない。
 凛はベッドにいて、椅子に座って彼女についていた。
 さっきまで凛の姉と弟もいたが、もう深夜だし帰らせた。
 今、凛はマスクをつけて酸素を吸入している。
 医師の話ではそのうち目が覚めるから大丈夫だと言っていたが、彼女がちゃんと目を開けて俺を見るまでは安心できない。
 もうこのまま目を開けないんじゃないかと不安になる。
 海に飛び込む以外に助かる方法もあったのではないだろうか?
 だが、あの火の中を戻るのは無理だったし、消火もどれくらい時間がかかるかわからなかった。鎮火するのを待っていたら凛が焼け死んでいたかもしれない。
 それで海に飛び込んだが、ベッドに横たわっている凛を見ていると胸が苦しくなる。
 俺の選択は間違っていたのかもしれない。
 彼女が泳げないと答えた時に別の選択をするべきだった。
 この世で一番愛おしい人の手を握って声をかける。
「凛、目を開けて俺を見てくれ」
 懇願するように言えば、彼女が俺の手を握り返した。

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