昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
「ああ。ずっと君に持っててもらいたいと思ってるはずだ。さあ、その足じゃ歩くのが辛いだろ? 送っていく」
「いえ、そこまでご迷惑をおかけするわけには」
 丁重に断ったその時、うちでも昔乗っていたアメリカ製の車が走ってきて横に停まった。運転席には伊織さんが乗っている。
 もううちの車は売り払ってしまったけど、その車を見て裕福だった頃の生活を思い出した。
昔は家に庭師や運転手、家庭教師もいて、家の中は賑やかだった。あの頃の生活に戻ることはもうないだろう。
「お昼に弁当をわけてくれたお礼だ」
 森田さんが急に私を抱き上げたので、思わず「キャア!」と声をあげた。
「も、森田さん、なにをしてるんですか?」
 身内以外の男性にこんなに密着するのは初めてだ。
 しかもお姫さま抱っこ。
 大騒ぎする私とは対照的に彼は落ち着いている。
「車に運ぶだけだ。怪我をしてるし、花緒が切れてちゃ歩けないだろ?」
 その言葉通り、彼は横付けされた車の後部座席に私を乗せた。
「伊織、まずは履物屋へ」
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