昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】

「そうなんだけど、自然の風の方が好きでね」
「なんとなくわかります。自然の風の方が気持ちがいいですもんね」
　彼の言葉に相槌を打ちながら自分の席に座る。
　しばらくすると春子さんがやってきた。
「おはよう。今日は髪下ろしてるのね。女学校時代に戻ったみたい」
　私を一目見て彼女がそんなコメントをするので、慌てて言い訳した。
「い、いつもまとめてるとたまに頭が痛くなるから、今日は下ろしてきちゃった」
　それは真っ赤な嘘。本当は頬の腫れを隠すために、下ろしてきたのだ。
　胸がチクッとするのを感じながらも笑顔を作る。
「まとめ髪もいいけど、私は髪を下ろしてる凛も好きよ」
　春子さんが優しく微笑んで席に着く。
　この日、森田さんは朝から客先に行っていて、会社に来たのはちょうどお昼休みになってからだった。
「あっ、森田さん、おはようございます……じゃなかった。もうこんにちはですね。昨日はどうもありがとうございました」
　出勤してきた彼はいつものようにメガネをかけていた。