昭和懐妊娶られ婚【元号旦那様シリーズ昭和編】
 その小さい肩を抱いて慰めるが、彼女は泣き止まない。
 迎えが来るが、父親ではなかったことに彼女は失望していた。
 そんな彼女を笑顔にしたくて、俺は指輪がついたネックレスを外して彼女の首にかけた。
 母親が亡くなった時に父親からもらったから、当時子供だった俺にはサイズが合わず、ずっと鎖につけて首に下げていた。
『これは魔法の指輪だよ。なにか辛いことがあった時、これをギュッと握りしめればいい。元気が出るから』
 俺に勇気を与えてくれた指輪は母が亡くなるまで指にはめていたもの。
 俺はずっとこの指輪に守られていたような気がする。
 でも、もう俺は指輪がなくても大丈夫だ。
 次は彼女を守ってくれ。
 そんな願いを込めて凛に指輪を渡した。
『ありがとう、お兄さん。私、この指輪大事にします』
 指輪を握って約束する彼女を見て少し安堵した。
 じいさんが指輪を見知らぬ少女に渡したと知ったら、カンカンに怒るだろうが、後悔はしていない。
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